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第19回:『貧乏人の逆襲!』を読む。

1.「自前」と「地域」について

1-1.なるべく勝手に生きていく

 5冊目は『貧乏人の逆襲!』です。 

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 この本は笑える本であり、これまでの本の中で最も読みやすいものかもしれません。著者の松本哉さん*1は、高円寺・北中商店街でリサイクルショップ「素人の乱5号店」を経営するかたわら、さまざまなデモを開催するアクティヴィストとしても有名です。最近では2011年4月10日に高円寺で1万5,000人の反原発デモを主催したのを皮切りに、定期的に「原発やめろ!!! デモ」を主催、何の組織もなく1万人以上の規模のデモを開催することにより、アクティヴィストとして注目されました。

 さて、今回の主なキーワードは「自前」と「地域」と「笑い」です。「自前」は、この連載の第12回、宇根豊さんのいう「自給」とほぼ重なりますが、「ブリコラージュ」という意味をもそこに含んでいる語として使いたいと思います。さらにそれは松本さんのいう「なるべく勝手に生きていく」というやり方(それは「自治」とも言いかえられるでしょう)にも関連しています。そして、その自治-モノの自治-を体現している、松本さんの経営しているリサイクルショップは、高円寺の北中通り商店街という「地域」に根づいています。

1-2.デモを「笑い」に

 また、この本を読めばすぐにわかるように、松本さんの活動(デモや「闘争」、イベント)にはつねに「笑い」があります。というより、「笑える」ことしかしていないともいえます。世界的にも、1999年のWTOシアトル会議のときに集まった反グローバリズムのアクティヴィストたちに見られたように、デモや集会に祝祭的な仮装や巨大人形を持ちこんだり、音楽とダンスがつきものになっていたり、カーニヴァル的な笑いの要素が欠かせないものとなってきています。笑いは、多様な主張をもつ人びとを繋ぐものとして、そしてそれまで無関心だった人びとを巻き込んでいくものとして働いているといえるでしょう。すなわち、「コモン=〈共〉」を創りだす役割を果たすのです。けれども、それらのアクティヴィズムでは、まだ「笑い」は別の目的を持つ活動に付加的な効果を生むためのものという感じですが、松本さんの活動にとっては付け加えられたものというより、活動が「笑い」を生みだすためのものだという印象をもちます。
 そして、その活動は、反WTOのアクティヴィズムとは異なり、地域=地元(ジモト)に根づいているというのも重要な違いです。松本さんは柄谷行人*2さんとの対談で、1万5,000人を集めた高円寺での反原発デモについて、「高円寺のデモがすごく広がったのも、結局それなんですね。・・・・・・ツイッターとかネットだけじゃなくて、実際に知り合いの店がいっぱいあるし、音楽系の人、芝居をやっている人、アーティストの人とか、いろんな知り合いが(地域に)普段からいて、すぐに情報が行くんです。そういうのがあった上でネットに出たから強かったんだと思う。ネットだけだと情報としてしか伝わらないし、興味がある人にしかいかないっていうのがあると思う」[瀬戸内・鎌田・柄谷ほか 2012:128]と言っています。初期の他のデモの多くが数百人規模だったことを考えますと、「地域」(=ジモト)に根ざした活動の強みと多様性が見て取れるでしょう。
 これらのキーワードを全部まとめてつなぐと、松本さんの言う「なるべく勝手に生きていく」ということに重なっていくわけですが、まずは、それこそグローバルな消費資本主義に対抗するための、地域に根ざしたリサイクルショップの活動から見ていきましょう。それは、地域的な「モノに関する自治」を取り戻すための「リサイクル革命」として位置づけられています。次回より、「モノに関する自治」について考察します。


【参考文献】

松本哉
 2011 『貧乏人の逆襲!(増補版)』ちくま文庫
瀬戸内寂聴/鎌田慧/柄谷行人ほか
 2012 『脱原発とデモ-そして、民主主義』筑摩書房

*1:松本哉(まつもと・はじめ)
1974年生まれ。リサイクルショップ「素人の乱5号店」店主。2001年「貧乏人大反乱集団」を結成。各地でデモやパフォーマンスを展開、「世界マヌケ革命」を目指している。

*2:柄谷行人(からたに・こうじん)
1941年生まれ。文芸批評家、哲学者。日本近代文学への批評や、マルクス・カントらの独創的読解など多彩な執筆活動を続ける。著書に『漱石詩論』、『世界史の構造』など。

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